伊藤メンタルクリニック

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メンタルの病気のチェックリスト

 前回は、メンタルの病気の見分け方について、非常におおざっぱな見分け方をご紹介しました。

「生活に支障をきたしているか」という指標でも役立つのですが、今回はもう少し詳しい見分け方について、考えていきます。

 チェックリストもいろいろな種類がありますが、ごく簡単なものをご紹介します

大野裕:「うつ状態のスクリーニングとその転機としての自殺の予防システム構築に関する研究」より、一部改変
質問事項はいいいえ
1. 毎日の生活が充実していない
2. これまで楽しんでやれていたことが、楽しめない
3. 以前は楽にできていたことが、今ではおっくうに感じる
4. 自分は役にたつ人間だと考えられない
5. わけもなく疲れたような感じがする
6. 死について何度も考えることがある
7. 気分がひどく落ち込んで、自殺について考えることがある
8. 最近(ここ2週間)ひどく困ったことやつらいと思ったことがある
 

 質問 1 〜 5 は、心の健康についての簡単なバロメーターです。疲れやすい、充実感がない、自分に自信が持てない、等の症状は、心が疲れてくるとにより生じやすい症状です。心の健康が損なわれてくると、通常このような漠然とした症状が先に現れてきます。それ以外の症状として、不眠症状(寝つきが悪い、眠りが浅い、朝早く目が覚める)、不安症状(わけもなくイライラする、怒りっぽくなる)等が、よく認められる症状です。

 ただ、これらの症状は、健康な人にとっても時々認められるもので、これらの症状が認められたら、すぐに病気、と決められるものではありません。「この1ヶ月は割りと仕事が大変だった」「失恋して落ち込んだ」等、日常生活はストレスにあふれています。

 私はよく患者様にお話することがあるのですが、ストレスのない生活なんて存在しません。それは、無菌室で生活しているようなものです。しかし、実際は多少のストレスはあり、そのストレスこそが人間を強く育ててくれるともいえます。ストレスを受け、しばらく落ち込んだりしても、なんとか生活を維持しながら通常は調子がまた戻ってきます。

 しかし、過度に大きなストレスがかかると、調子がずっと悪い状態が続き、「疲れやすさ」「充実感がない」「自分に自信が持てない」といった上記の症状や、「気分がずっと晴れない」「食欲がわかない」「集中力が持てない」といった症状も出現し、ついに日常生活にも支障をきたしてきます。ここまできたら、病的な状態で、専門医療機関の受診をしたほうがよいといえます。

 さらにそのような状態が長く続くと、最後には「もう死んだほうが楽だ」という考え方が起こってくる場合があります。質問 6 〜 7 に1つでも当てはまる場合、医療機関での治療を強く薦めます。死のうと思っている方の多くは、病的な考え方になっていますが、医療機関にかかって治療を受け、良くなった方の多くは「なんでそんなバカなことを考えていたんだろう」とおっしゃいます。

 質問 8 は、内容によって判断するという質的な質問です。ストレスの引き金によって、深刻さが違いますので、たとえば配偶者や家族の死亡、親戚や近隣の人の自殺など。大きなストレスを受けたあとに気持ちが沈む場合、医療機関への受診が望ましいでしょう。

 このように、心の健康を考えるときには、「疲れやすい」「充実感がない」「自分に自信が持てない」、「気分がずっと晴れない」「食欲がわかない」「集中力が持てない」等の症状を参考にしつつ、ストレスの引き金も考慮して判断していきますが、病気かどうかの判断の目安は、日常生活へどの程度支障をきたしているか、ということです。ただ、「自殺」の危険信号が出ている場合は、すぐに医療機関への受診が必要と考えてよいでしょう。

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